資金調達について
Vol.1
「資金調達、資金繰りの考え方」
これから創業、又は創業間もない経営者が直面する問題としてお金が足りなくなったら金融機関から借入れするしかないな・・・・と考えられることでしょう。
勿論、金融機関からの借入が必要な場合はありますが、その理由がどういった借入金なのか十分に理解しておかないと、返済に行き詰ってしまうリスクを抱えてしまいます。
例えば、小売で日々現金収入が得られる場合、仕入代金の支払、人件費その他経費の支払いは金融機関から借りなくても資金が不足しないはずです。仕入代、経費の支払いが借入しないと支払えない場合、商売が儲かってない事を意味しますので、一時的に借入はいいですが、経営のやり方を考えて利益が出るようにしていく必要があります。
上記の小売の現金商売であっても開業当初の店舗構築、改装その他設備等の投資に必要な資金については手元資金があればそれで賄うべきですが、手元資金がない場合借入金をしていく必要があります。この場合、借入金の返済についていくらなら月々返済できるのかを検討しながら借入額、返済額を決めていく必要があります。
商売が儲かっていない状態で資金が不足すればまず頭に浮かぶのは金融機関からの借入です。しかし金融機関が貸してくれたから資金繰りの問題が解決したとは言えません。
多くの経営者は、その時その時の資金繰りをやり繰りするので頭がいっぱいで、重要な点と見ていないのがほとんどではないでしょうか?金融機関から借入れするのはいいのですが、それが運転資金なのか?赤字資金なのか?で大きな違いがあります。
Vol.2 に続く
Vol.2
「借入金の種類について」
事業を行っていく上で損益計算書を年に一度は必ず作成しなければなりません。損益計算書を作成するのは何のためかを考えてみたとき、多くの経営者は確定申告のためと考えている方がほとんどではないでしょうか?しかし損益計算書をみれば会社の儲けでお金を借りて返済できる会社なのか、できない会社なのかの判断ができる重要な計算書なのです。
では、損益計算書のどこを見ればいいのでしょうか?損益計算書を見ると必ず「売上総利益」、「営業利益」「経常利益」といった区分があります。借入を行っても返済できる会社は「営業利益」が黒字である会社と考えてもいいと思います。
営業利益が赤字の状態で借入を行うのは赤字資金の借入であり、返済のアテのない借入であり、営業利益が赤字のままいくら苦労してその場その場の資金繰りを行っても永遠に資金繰りの悩みから脱却できず、いずれ破たんしてしまうという結果になります。
では営業黒字が黒字なのにお金が足りなくなるのはなぜか?
営業黒字であっても売上金がすぐに回収できないで売掛金として残っている残高、商品など仕入販売するまで現金化できない在庫を保有している残高合計と仕入代金を支払わずに残っている買掛金残高との差額は、一時的に資金不足が生じ借入が生じるため借入金で賄うことになります。これが運転資金の借入と言われるものです。一般的に営業利益が黒字であっても設備投資を行う場合、一時的に手元資金では足りず借入金で賄うのが一般的です。いわゆる設備資金の借入です。
Vol.3につづく
Vol.3
「借入金の内容によって資金繰りの考え方が変わる」
前回、記したように現在行っている借入はどの種類なのかを明確に認識する必要があるのですがなかなか認識されている経営者は少ないのではないでしょうか?
特に赤字資金の借入の場合早急に対応していく必要があります。
【赤字資金の借入の場合】
よく、金融機関から借入れがもう出来ないため、経営者個人の資金を会社に貸し付けたりしている会社を見ます。営業利益がマイナスの状態を放置したまま、いくら会社に資金を投入しても絶対に資金繰りは改善しません。また金融機関から借りた資金も、元本はおろか利息すら支払いが困難になっていくことになります。赤字資金の借入が存在する場合、当面の資金繰りも必要ですが、まず将来に向かっての経営改善をどういう形で進めていくのかを考えていく必要があります。
経営改善計画の詳しくはまたの機会に触れますが、まず、現状の損益状況、儲かっている商売、儲かっていない商売を明確に認識すること、経費の見直しを行い削減できるものは削減していくと言った方策に基づいた計画を立てていく必要があります。赤字資金の借入がある場合、経営改善計画の作成が必要であり、そのためには正確な月次の損益計算書、部門別損益計算書の作成が必要となります。
【運転資金の借入の場合】
運転資金=売掛金+受取手形+商品製品等在庫-買掛金-支払手形です。
運転資金の借入金を減らし、金利負担を軽減する必要があります。この場合、売掛金、受取手形の回収サイトと買掛金、支払手形の支払いサイトの認識を取引先ごとに検討する必要があります。
売掛金、受取手形の回収より先に買掛金、舍頼手形の支払を行っている場合、売掛金、受取手形の回収が行われるまで借入金で賄う必要があります。買掛金、支払手形の支払いを売掛金等の回収時期まで延ばせないか?売掛金等の回収を早めることはできないか?を仕入先得意先に交渉していく必要があります。
在庫については別の機会に触れたいと思いますが、長期に売れずに滞留している在庫があれば、廃棄しなければならないもの以外は、いかに早期に売却し資金化できないかを検討する必要がある他、仕入の方法に無駄がないかを検討し、在庫をいかに少なくするかを検討する必要があります。
【設備投資資金の場合】
設備投資を行って借入を行ってしまった後ではなく、設備投資を行うかどうかの検討時に設備投資により得られる収益を見込んで、借入金を何年で返済できるかを認識してから借入金を行う必要があります。借入の返済期間は短ければ短いほど良い事になります。なぜなら返済期間が長くなればなるほど業績の不確実性が高まるからです。
現実、過大な設備投資をした後業績が悪化し、資金繰りに窮境している会社は数多くあります。しっかりした設備投資計画が必要であると言う事です。
Vol.4につづく
Vol.4
「まとめ」
以上、簡単に資金繰りを行うに当たっての考え方を借入の内容別に説明させていただきましたが、共通して重要なのは、月次ベースで損益を正確に把握できている事、将来見込の計画がしっかり立てられていることが一番のポイントであることは言うまでもありません。
また資金繰りの基本的な考え方を述べましたが、具体的な対応は会社の規模、業種等によりさまざまであり会社の実態、業界の慣行等を十分認識されている経営者が積極的に取り組んで対応する必要があります。